匿名組合

商法で規定されているが、実際の歴史は株式会社より長い

匿名組合は出資の契約方式のひとつで商法に定められています。出資者(匿名組合員)は事業者(営業者)にお金を渡す代わりに、事業で得た利益の分配を受ける権利を得ます。

商法が成立したのは1899年、世界初の株式会社である東インド会社ができたのは1602年です。匿名組合はそれよりもはるか以前、10世紀頃にヨーロッパで生まれたという説があります。事業における出資の原型ともいえる契約方式です。

株式会社とよく似ていますが、匿名組合は事業が終了するまでは利益の分配を得る権利「のみ」を持っています。財産の状況を検査する権利もありますが、経営に口を出すことはできません。株主が実質的な事業体のオーナーであり、株主総会で取締や重要事項を決めることができる株式会社とは根本的に異なります。

匿名組合員は、事業が終了するときに出資額の返還を営業者に要求することができますが、損失が発生した場合、その補填まで請求することはできません。100円出資したけど10円しか返ってこなかった、ということもありえます。

日本のソーシャルレンディングには欠かせない

匿名組合契約が利用される場面としては、ヘッジファンドや不動産小口化商品などがあります。出資者は利益の配当を受け取っていればよく、売却のタイミングに気をもむ必要はありません。そもそも株と違って基本的に売却できません。

クラウドファンディングにもよく使われています。なかでも、日本のソーシャルレンディングは、ほとんどが匿名組合契約の形をとっています。

お金を貸しているはずなのに、なぜ出資なのかと疑問に思われるでしょう。日本では利益を得るために日常的にお金を貸す場合、貸金業登録をしなくてはなりません。投資の一環として行うと法令違反になる可能性があるのです。

そこで貸金業登録をしている仲介会社が間に入り、借り手にお金を貸します。そのお金は、投資家と匿名組合契約を結ぶことによって調達。利息によって得た利益を分配し、事業終了(返済)後に元本を投資家に返還するというわけです。

不動産特定共同事業法と任意組合もおさえておこう

ソーシャルレンディングによく似た小口投資に、不動産特定共同事業というものがあります。宅建業の免許を持ったプロの不動産業者が、不特定多数の人から出資を受けて不動産賃貸業を営むことをいいます。契約の枠組みにはいくつかあり、匿名組合型、任意組合型などが挙げられます。任意組合型は民法の任意組合という契約を使った仕組みで、出資者は実際に不動産の所有者になるため、税制や売却時の取り扱いなどにおいても違いが出ます。

2017年に不動産特定共同事業法が改正され、今までできなかった書面による約款交付ができるようになったり、資本金の小さい事業者でも参入できるようになったりしました。クラウドファンディングの活用による不動産投資市場の活性化を狙ったものです。

ソーシャルレンディングもクラウドファンディングの一種であり、選択肢が増えることは投資家にとって喜ばしいことです。