■伝統的な金融商品に負けない、ソーシャルレンディングの可能性
ソーシャルレンディングの魅力を理解し、取引開始の方法もわかった。最後に気になるのは、将来性でしょうか。
まだ取引量や認知度は株や投資信託などの伝統的な商品に及びません。取引に関する情報や業者選びのしやすさでは、すでに大規模に販売されている商品の方がしやすいのは事実です。
ソーシャルレンディングには、将来的に社会インフラ並に重要になる可能性があります。それには、次のような理由があります。
■インターネット社会の適応した画期的な仕組み
ソーシャルレンディングをはじめとしたクラウドファンディングには、資金需要者と資金供給者、仲介者の三者全員が納得する画期的なビジネスモデルです。それは、インターネット環境が整備された現在だからこそできる仕組みです。
仲介会社は貸金業などの登録を必要とするものの、事務所とインターネットさえあれば少人数でも開業でき、コストがかかりません。貸し手は、自宅からいつでも気軽に投資することができます。借り手は、低金利かつ短期間で資金を募ることができます。
資金を融通する手段として、これ以上に合理的な仕組みがあるでしょうか。株式上場は数年かかりますし、銀行融資でも数ヶ月待たされる場合があります。ソーシャルレンディングは条件が合えば、数日で融資が成立することもあります。
銀行に変わる社会インフラとして整備されていく時代もくるかもしれません。
■クラウドファンディングの本領を発揮する社会貢献事業
日本人の社会貢献に関する意識は、年を追うごとに高まっているようです(内閣府「社会意識に関する世論調査」など)。社会貢献性の高いソーシャルレンディングは、このような機運の高まりに乗って勢力を拡大していくでしょう。
例えば、クラウド証券が運営するクラウドバンクでは、ソーシャルレンディングでマイクロファイナンスを取り扱っていたことがあります。5,000万円の募集に対して6,000万円が集まったという人気ぶりでした。
マイクロファイナンスは、貧困層に向けた小口融資のサービスです。代表的なものはバングラデシュのグラミン銀行で、創始者のムハマド・ユヌス氏は、2006年にノーベル平和賞を受賞しています。
ソーシャルレンディングの資金需要者は必ずしも社会貢献事業を行っているとは限りません。ですが何らかの理由で銀行融資を受けるのが難しい人にお金を貸すことは、それだけでも社会的意義があります。
■政府と金融庁が認める投資型クラウドファンディング
ソーシャルレンディングは、投資型クラウドファウンディングに位置づけられます。この分野の普及は、金融庁も促進しており、法令改正が行われています。
2014年に改正された金融商品取引法施行令では、ソーシャルレンディングの募集に必要な金融商品取引業者の登録要件を緩和するなどの内容が盛り込まれました。
海外では、2012年に米国でJOBS法(新規事業活性化法)が成立。それまで困難だったインターネットでの資金調達を可能にしました。
各国の政府もソーシャルレンディングを含むクラウドファンディングの可能性に注目しているのです。
■太陽光発電、海外投資、地方創生……多様な可能性を秘めている。
最期に、ソーシャルレンディングの応用事例として、特徴的なファンドや業者を紹介しましょう。事業の多様性は、幅広い分野で発展していく可能性を示しています。
《不動産特化型事業》
「OwnersBook」を運営するロードスターキャピタル株式会社は、不動産の仲介やコンサルティングを手がけており、二人の代表取締役はともに不動産鑑定士の資格を持っています。投資すると不動産のオーナーと同様の地位が得られるといいます。
maneo関連会社が提供する「ガイアファンディング」は、海外不動産に特化。日本にいながら、世界中の不動産投資家に融資できます。
《太陽光発電》
SBIソーシャルレンディングは、グループ会社が太陽光発電ファンドを運営していることもあってか、太陽光発電事業者に対する貸付の案件をよく取り扱っています。
先ほど登場したクラウドバンクも、再生可能エネルギーに特化した案件募集の実績があります。
環境問題が世界的に深刻化していくなか、原子力発電への反発が強い日本。発電事業への将来性に投資するのも面白いでしょう。
《地方創生・新興国》
クラウドクレジットは世界中の企業と提携し、新興国をはじめとした各国の個人や企業への融資案件を取り扱っています。社会貢献性に加えて、為替ヘッジつきで10%前後の高利回りも魅力。
さくらソーシャルレンディングは、地方創生型を掲げています。ふるさと納税ではありませんが、地元の企業や不動産を応援したい人は利用してみてはどうでしょうか。
■ソーシャルレンディングはますます注目され、成長していく
ソーシャルレンディングは、その仕組自体が合理的で、社会インフラとなる可能性もあります。社会貢献性も高く、各国の政府も普及を促進しています。これからも継続・発展していくでしょう。