■ソーシャルレンディングを大雑把にいうと
ソーシャルレンディングは、お金を借りたい人と貸したい人をつなぐ仕組みです。
お金を必要としている人にとっては自由度の高さで、投資家にとっては社会貢献性の高さや利回りの高さで、それぞれ注目されています。
個人投資家は、個人や法人にお金を貸し、利息を受取ります。手軽にできる反面、元本割れのリスクがあります。
■ソーシャルレンディングは不特定多数の個人間でお金を融通する仕組み
ソーシャルレンディングはクラウドファンディングの一種です。さまざまな分類方法があるなかで、融資型や貸付型、投資型などに分類されます。
不特定多数の人が資金を融通し合うことのできる仕組みを総称してクラウドファンディングといいます。銀行や株式市場のような伝統的な金融制度を利用するのではなく、主にインターネットを使って個人間で行われます。
クラウドファンディングを大きく分けると寄付型と購入型、投資型の3種類になります。投資型はさらに株式型(エクイティ型)と融資型(貸付型)に分けられます。その名のとおり、株式型はお金を出す人は、その見返りとして株式のような形で、配当を受ける権利や経営権などを手に入れます。
貸付型クラウドファンディング(=ソーシャルレンディング)でお金を出した人は、その見返りに利息をもらいます。貸し手と借り手は、「実質的に」お金を貸し借りする契約(金銭消費貸借契約)を結びます。
契約にもとづき、貸し手はお金を預け、期日までに利息と元本を受け取ります。貸す金額は、一定の範囲内で貸し手が自由に決めることができます。もし借り手が資金繰りに失敗すれば、貸したお金を失うリスクもあります。
■日本のソーシャルレンディグ利用者が力を合わせれば、宮古島を買える?
前述の通り、ソーシャルレンディングは新しい金融手段ですが、その普及の速度は目をみはるものがあります。
2005年にイギリスで初めて仲介会社が設立され、翌年には世界中で取引が行われるようになりました。
日本では2007年に『maneo』が設立されたのを皮切りに、相次いでサービスが開始されました。矢野経済研究所の調査によれば、2015年時点の市場規模は322億円にのぼり、日本におけるクラウドファンディングの約89%を占めるということです。何もないところから、わずか7年足らずで沖縄県宮古島市の一般会計予算に匹敵する規模を持つことになったのです。
普及の背景として、インターネット環境が世界的に整備されているということもありますが、既存の金融にない画期的な仕組みを持っていることが挙げられます。
不特定多数の個人や団体をつなぐことで、借り手は銀行や消費者金融が手を出さないような場合でも資金調達ができます。貸し手にとっては、資産運用の選択肢が格段に増えます。仲介会社も手数料で儲かることができます。まさに「三方よし」の仕組みです。
■日本のソーシャルレンディングは、事情があってちょっぴり複雑
普及の速度に驚いたところで、仕組みの話に戻って、もう少し詳しく説明します。「なんか、怪しい横文字の投資話みたいだけど、詐欺じゃないの?」と思う人も、日本におけるソーシャルレンディグの仕組みがわかれば安心できるはずです。
先ほど登場した、世界初の仲介会社であるイギリスの「ZOPA」は、個人間の取引を仲介し、貸し手と借り手が直接契約するのを手伝うサービスです。日本でも営業していたことがありますが、すでに撤退しています。その理由の1つは、日本の法制上、ZOPAのビジネスモデルそのままでは違法となってしまうことがあります。
日本では、個人投資家が儲けのためにお金を貸し付けることは、実質的に(合法的には)不可能です。貸金業法の規制があるからです。繰り返しお金を貸して利息を得るためには、貸金業登録をする必要があります。それには、純資産5,000万円、3年以上の金融経験など、一般的な個人にとっては非常に厳しい要件を満たす必要があります。
ここで、仲介会社が重要な役割を果たすことになります。
■個人間の貸付のはずなのに、仲介会社を通さなければならない理由
それでは、どうすれば便利なソーシャルレンディングを個人が利用できるようになるのか。貸し手と借り手の2者間契約ではなく、間に仲介会社をはさめばいいのです。契約の方式としては、貸し手と仲介会社が匿名組合契約を結び、仲介会社と借り手が金銭消費貸借契約を結びます。
匿名組合契約とは、「事業に出資するから、儲かったらお金をちょうだい。儲からなかったらあきらめます。終わったら、残ったお金も返してね」という契約です。株式会社への出資と違って、経営権や会社財産の所有権はありません。出資者は、ただ儲けを分配してもらう権利のみ持っています。
金銭消費貸借契約とは、お金を貸し借りするときにする契約です。前項で説明したように、これを繰り返し行うには、貸金業登録が必要です。
貸し手は、仲介会社の「お金を貸す事業」に出資します。そして、貸金業者である仲介会社は、借り手にお金を貸す。きちんとお金が利息付きで返ってくれば、必要経費(仲介会社の手数料)を差し引いた残り(事業の利益)が仲介会社から貸し手に分配され、契約は終了となります。
もし借り手が仲介会社にお金を返すことができなければ、事業の儲けがないので、貸し手は分配を受ける(利息・元本を受け取る)ことができません。これは、実質的に貸し手が借り手にお金を貸しているのと同じことになります。
■信頼できるソーシャルレンディグ業者は、2つの登録をしている
匿名組合契約の出資者を不特定多数の人に向けて募集するためには、第二種金融商品取引業登録が必要です。これも誰でも簡単に登録できるものではありません。
貸金業登録業者も、第二種金融商品取引業者も、金融庁が業者名を公開しているので、登録していないのにしていると嘘をついたらバレます。
主要なソーシャルレンディングの仲介会社は、もちろん両方とも登録しています。もし聞いたこともない会社がソーシャルレンディングを持ちかけてきたら、2つの資格を登録しているか調べてみましょう。どちらか片方でも登録されていなかったら、怪しい業者かもしれません。
■ソーシャルレンディングの仕組みの勘どころ
ここまでの話をまとめると、ソーシャルレンディングは、クラウドファンディングの一種で、実質的に個人間のお金の貸し借りをするもの。21世紀に登場した新しい手法ながらも、急速に利用者が拡大しています。
貸し手はお金を失うリスクと引き換えに、利息を得ることができます。
日本の法制上、個人が貸付をする際には、仲介会社と匿名組合契約を交わします。ちゃんとした業者であれば、第二種金融商品取引業者と貸金業登録業者の登録をしています。